保護者と幼稚園の話をしていて、時々「なかの幼稚園は先生がすごいですよね」という話になります。
何がすごいのか、と聞いたときに、
- 「よく動く(子どもと一緒に遊んでいる)」
- 「情報共有がはやい」
- 「先生がやさしい。私だったら怒っちゃうところを怒らない」
こんなことを言われることが多いです。これは、私(園長)も感心することがあるのですが、そんなエピソードをご紹介します。
見方によっては同じ場面でも異なる解釈

道具を作っている所
私だったら、怒ったり声を荒げたり嫌な顔しちゃうな、という時に根気強く話を聞いたり、説明したりする場面を見かけます。
先日も、ある先生から話を聞いているとき、「すごいんですよ。A君。」と教えてくれました。
A君は、お集まりの時に結構すぐフラフラと立ち歩くことがある子です。で、この頃、劇の取り組みがあって、この時も他のクラスの子に劇を見せたときの様子でした。
A君はその日の前には劇をするときに、フラフラと場を離れたりしていたので、劇はやりたくないのかな?とおもっていたのですが、先生が言うには…

あー、よかった、うれしい。という笑顔で話してくれました。
これ、全然別の見方をすれば、同じ場面を、

とも言えると思います。
同じ場面を、どう受け取るか、どう願うか、という話になりますが、私はこの先生が「できたこと、がんばったこと」に着目してほめていたのを良いと思います。
子育てにおけるスモールステップの考え方

「スモールステップ」という考え方があります。
目標があったとして、いきなりその目標全体が達成できるように、という考えと、目標迄に何段階もステップを踏みながら達成を目指していく、という考え方です。
例えば、先ほどの劇で言えば、「劇の話を役で演じてしっかりやる」というのが目標になっていたとして、まわりにいた子にちょっかいだしたら、目標達成できなかった、ととるか。
今までその場にいられなかった子からすれば、まずはその場にずっといることが小さな目標で、次はセリフが自分で言えて、次は‥
最後にぜんぶやれるようになるまでに何段階かの目標を作って、まずはその「小さな一歩を評価する」というスモールステップの考え方か。

それと、子どもそれぞれの特性を考えに入れるという事もあります。
A君にとっては小さな一歩の目標が「その場にいる」だったかもしれませんが、他の子にとっては「その場にいる」のはたやすくできて、「セリフを言う」や「一人で役を演じる」などが目標になる事だってあります。
よく「ほめてそだてる」という言葉がありますが、この「個々の目標のスモールステップという考え方」が、ほめて育てるの基本になると思います。
人間は言われた通りの行動をする、という事があるそうです。つまり、ほめられていると、褒められる自分のイメージを持って褒められることを自然にできる。
一方で「またダメな事して、お前はダメだ!」と言われていると、ダメなイメージがあるからダメなことをする、という事です。
子ども達と過ごしていると、これはその通りだと思います。よくできるねえ、と言っていると、次もそれを超える結果を持って来てくれます。
クラスでお片付けの時間に片づけない時で「あー、もう、みんな片付けないと、○○できないよ!」と怒鳴っていてもあまり片付けが進まず結果○○ができないというのがあります。
同じような場面で「あ!片付けがんばってる子がいる、これなら○○できる」と大きな声で言うと、結構片付けをがんばる子が増えて短い時間で片付け終わる、という事が起こります。言われた通りになるんですねぇ。
こんな考えを持って、先生のほめ言葉を聞くと、クラスが良い方にまわっていくんだろうな、と嬉しくなります。
先生達はこんなことを考えて子供達に接しています!

子ども達と話し合った時に使っていたボード
先生達の考えがよく表れているのが、クラスだよりのコメントです。ちょっと長くなりますが、お家の人に劇を見せる直前のおたよりにあったコメントを紹介しますが、一部、幼稚園以外の人にも分かるように原文を替えています。
1月から始まったこの劇の取り組み。はやい段階で「劇」という言葉がでたり、お家の人に見せたい!と言ったりしていたもりくみ(年中)さん。
しかし、お客さんに見せる・見られるというのがどういうことなのかわかったのはつい最近(2月)のことです。
そらぐみ(年長)さんの劇を見たり、そらぐみさんに見せたりして、こういうことか!と理解した子が多かったと思います。
ごっこ遊びやお話遊びで自由に表現したりお友達の真似をしたりする楽しさを知り、劇として形を作っていく中で、
- 「はずかしい。難しそう…。でも挑戦したらできた!」
- 「一人でできた!」
- 「お友達と一緒だから大きな声をだせた!!」
など、それぞれのタイミングやポイントで一人一人が楽しさを感じたり自信をつけたりする姿が見られました。
一年間、一緒にすごしてきた仲間とだから安心して自分の表現ができる、意見交換ができる、仲間の存在が力になる。
劇の最中も仲間の動きを見る、声を聞いて動く、こたえるなど「仲間のなかで」「仲間とだから」できるのがこの活動なんだなと改めて感じました。
3学期の今だからできることですね。
さあいよいよお家の人に見せる日です。そらぐみの時とはまた違った雰囲気に、緊張・興奮・嬉しさ恥ずかしさ…色んな気持ちが混ざって普段とは違う姿を見せることもあるかと思います。
どんな姿も今の子どもたちの姿です。
受け止め・見守っていただけたら、と思います。
精一杯の力で頑張る子どもたちに大きな拍手をお願いします。

このクラスの子たち、ごっこ遊びや普段の遊びの延長ではよくやっていたのに、いざお客さんが来たらやらなかった、ということや、先生が思っていたのと違うような姿を出してきた、という事がたくさんあったんだと思います。
でも、その中でこの文章から、「一人でできた!」の子や「友達と一緒だから大きな声を出せた!!」という子を、先生がちゃんとわかっていて、それを喜んでいたのが伝わってきます。
それぞれのタイミングやポイントで自信をつけていった姿を感じていた先生。
こうやって欲しい、という学年や活動としての目標はあります(なかの幼稚園、活動では結構たくさんの目標とか目的を設定しています)。その目標という先生の願いと、目の前の子の様子を感じる事。
両方を考えていくって、難しいのですが、この先生は日々の中でずっと考えてきたからの文章ですよね。
最後も「精一杯の力で頑張る子どもたちに」とあるのが、良いですよね。「精一杯にがんばるだろう」という予測と期待。
中途半端だったり適当な気持ちじゃなくて、きっとこのクラスの子どもたちは精一杯の力を見せてくれるだろうと思える先生。
きっと、先生も日々全力で向き合ってきたからこそ、子ども達も全力で取り組んでいくだろうと思っているんでしょう。
素晴らしいことですね!
園長先生のつぶやき

年長組の劇を見に行った時の様子
ほかの学年の先生はというと、年長組のやっぱり「劇の頃のお便り」です。
子どもたちの劇は日々の練習で積み重ねてきたことを「伸び伸びと発揮できますように一」と願っての当日でしたが緊張も力に代えて、その子らしさをだせたのではないかなーと思います。
そで(舞台の横)で出番まちをしている間、「がんばるぞー!!」「いいところみせるぞー!」と気合と緊張が入り混じった表情をしていた子どもたちでした。(ドキドキー!の子や、いつも通り〜お客さんの前で演じている子、皆にgoodポーズを送っている子もいました。)
緊張もあるけれど、おうちの方たちの反応や表情をみてうれしい様子だった子も多いですね。
なによりあの雰囲気、(お客さんが沢山!の)景色の中で堂々と立つ姿は本当にすごいな….と思いました。(私だったらー…心臓バクバクです…)
みんなの底力を見れました!!かっこよかった!!
この日まで仲間や先生とギューっと劇に向かった日々でした。おうちでも沢山支えて下さったことと思います。
一年前のもりぐみ(年中組)の劇の会でも成長を感じたかと思います。そして今年。その一年前も頭をよぎりながら、さらに成長を感じて下さっていたらいいなあ、と思っています。
子どもたちの意欲や前向きを日々感じながら、私も学ばせてもらいつつ、たのしませてもらいました。子どもたちの力って本当にすごいなぁ…と感じた取りくみでした。
先生達の目線というのか、子どもの捉え方が、よく表れている「おたより」です。
先生がすごい。子どもに対する向き合い方と付き合い方がすごい!です。