ある日、大学教授で幼児教育が専門の先生に、訊かれたことがあります。
「なかの幼稚園さんって、どうして子どもが言うことが保育に反映できるんですか?ダイナミックに取り組みますよね。」
『他の幼稚園より、子どもが言うことが取り上げられて、実際に出来る・叶う事が多い。それはどうやっているのですか?』という事でした。
そういわれると、そうなのかもしれません。
私たちは「子どもが言う事から何をするか考えよう」というのが元々にあるから、何となく当たり前に思っていたのですが、いわれてみると確かに、時間割が決まっているタイプの幼稚園ではこういう保育の組み立て方はしていないようです。
この時は、なかののカリキュラムについてお話ししましたが(専門の先生なので、専門的に話しました。なかの、自由な事は売りですが、それを支えるアカデミックな面もちゃんとあります!)最後に逆に「子どもが言うことから始まるから面白いこともたくさんありますよ」ともお伝えしました。
そうなんです。子どもが言って始まることで、面白いことがたくさんあるんです!それを象徴するのが、年長組の木工活動だと思います。
ちょうど、2学期の後半は木工活動の時期。今年、子どもたちはどんなことをやりたくて、先生達とどんな話し合いをしたのか、ちょっとおたよりから覗いてみましょう。
トンカチ楽しんでます!!
小さな木っ端でいろんなものを作っていた子どもたちですが、先週からいす作りからスタートし、いすが作り終わった子はテーブル作りにも挑戦しています!!
トンカチにも慣れて、複数人で作るテーブルは、大人もびっくりする程にあっという間に完成してしまいます。
完成すると自分たちで色を付けて、絵もかいて、朝の会・おままごと・お弁当・・あらゆるところで活用されていますよ。
いすにテーブル、、その次はー!?
と聞いてみました。するとー、
などなど、楽しそうな話になってきました。
などなど、子どもたちでどんどん話が進んでいました!やる気充分ですね!
「できる!自分たちはやれる!のある意味根拠のない自信。これが幼児期に一番大事ですよね。」
読んでいる方で「クッキー、本物?」「暗くしてって、なに?」と思った方もいるかもしれません。
これは、この中のお店などいくつかは、去年までに年長組が木工製作などで作ったものも入っていて、そのイメージもあります。
本物のクッキーを売っていたお店もありましたから。一方で、単純に自分がやってみたいものを言っている子もいます。
どんなことをやりたいのか、深堀してみました!
いす、テーブルに続いて次は?の話題で、いろんな意見が出ました。そのやってみたい事って、具体的にどんなことをやりたいのか、深堀りしてみました。
と、こんな感じの話をしていました。聞いてるだけでも楽しそう♪
すると、こんな話にもなりました。
という話にもなり、自分が1番作りたいものを考えて、チームに分かれていきました。現在、チームに分かれてどんなものを作って行くか作戦会議中です!!
園長先生のつぶやき
この文は保護者向けのおたよりなので、こんな感じに省略していますが、途中にはたくさんの話をしていました。
そして、さらっと決まったようにも読めますが、この間に担任の先生も「これはどうすれば実現できるのか?」(例えばブラックライトは実際に使えるのか、電源はどうするのか、そもそもすいぞくかんの建物はどうするのか、など)学年の先生や、木工を手伝ってくれる男性職員、ほかの学年の先生にも聞いてアイデアを練ったり、実現可能な形への変更を提案したりしていました。
ある意味、夢をかなえるのがなかのの木工製作。
そんなときの、夢を語る子どもたちの様子と、それを時間をかけて作って、やり切った時の「やった!」という達成感。
木工活動、長い時間をかけて取り組みます。その取り組みが真剣なものであるには、自分がやりたい事だから、というのが大きな意味になります。
なので、子どもが言うことが楽しいから、それを実現したいというのと同時に、子どもが発信するからこそ、達成できるとも言えます。
冒頭の「なかのさんって、どうして子どもが言うことが保育に反映できるんですか?」というのは、カリキュラムやシステムについての問いですが、子どもが言うことを取り入れるからできることがある、という中味の問題でもあります。
最後に、なかのが木工に取り組み始めたころから関わった前理事長の文を引用します。上記の園長解説と重なるところもあります。
ちょっと長いですが、それだけの想いがあるという事で、良ければお付き合いください。
前理事長の想い
「木工」
なかので木工の共同製作が始まったのは70年代。
始めの頃は少々手ごたえのあるものに取り組みながら、充実感のようなものを感じてもらえたらといった程度のものでした。しかし子ども達の様子を見ているとそれだけではなさそうです。
完成した木工の製作物で遊んでいる子ども達は、例えそれが、いつ壊れるものかわからない家や車でも、それを「本物」と思っているのです。
本当に入れる、本当に乗れる。しかも誰かに買ってもらった物とも違う。
子ども達にとって、この共同製作は「仲間と一つの夢を実現する」、そんな活動になっている様子です。
しかし、ここで何の問題もないわけではありません。この木という素材、子ども達にはそうたやすい素材ではありません。
「こんな形にしたい」と考えは持てても、技術が伴わず実現できない・・などといったことも起こります。そして、これは子ども達だけの問題ではなく、担任たちにとっても同様の問題となるのです。
実はこのあたりにこの木工による共同製作の意図があるように思われます。子ども達も担任たちも、悩み、努力する必要が起こる。
厄介な活動なのですが、共に悩むあたりに、実はこの活動の面白さもあるのです。
子ども達が、これまでの遊びの中でこだわってきたモノやテーマを作り上げていく・・という活動を軸に置きながら、生活を進めていくのです。
なかのの教育の中で木工を取り入れてやく50年、今、子ども達が大人や仲間との軸のある生活を創り出してくれる大事な活動になりました。
子ども達が「こんな迷路にしたい」などと言った時、その考えが実現可能かどうか吟味し、その方法を子ども達に知らせます。
ある時はそれが困難であること、計画の変更が必要であることなども、子ども達に提案しなくてはなりません。
そんな子ども達の夢を実現するためには、そのクラスの担任だけでなく職員全員が悩み協力し合うことが必要ともなります。
子どもが要求を出す。大人がその要求を聞く。その実現のために大人も子どもも努力する。そして時に、子どもの手に負えない時には大人の作業の様子を見守る子ども達。
そこに信頼関係が生まれ、同時に自分の思いを諦めることなく実現していこうとする人間に育ってくれることを期待しています。
おまけ
この写真は2022年。秋は夕暮れが早くて、職員の準備も真っ暗な中頑張ります。ライトで明るく見えますが、真っ暗です・・。ブラック?!
今年の職員もでした。いつもありがとうございます!