今回は、なかの幼稚園の未就園児クラス「親子の広場」でのおたよりです。「親子の広場」で、えのぐで楽しんでいた子ども達。その様子から
「小さい子どもが絵を描いているときに、大人が一緒に楽しむときのヒント&気を付けたい事」
をお伝えします。ちょっと堅苦しいことも言っていますが、基本は楽しんでいる子どもと一緒に、純粋に「たのしい!」を楽しむこと、だと思います。
11月の広場のおたよりからの報告
11月は、1学期から来ていて広場にもだいぶ慣れた子&11月からはじめましての子、それぞれの様子でした。やっぱり、慣れると安心して遊べる様です。これから寒くなりますが、おっくうにならずに遊びに来てくださいね!
11月の最終週に、えのぐで自由に描いてみよう、という場がありました。写真がインスタグラムに少し上がっていますのでご覧ください。
その時に園長(うたこ)と、前園長(恵子先生)が声をかけたことがありました。一部の人が聞いた、という事なのですが、これは全員が知っていると良いかな、と思いおたよりにしました。
ぬたくり
子どもって、えのぐを見て、やってみると、だいたいこんな感じですよね。
大人もやってみてください、となると、だいたいこんな感じが多いかな、と思います。
こどものこういうのを、「ぬたくり」と言います。大人のこういうのは、「絵」というのでしょう。
実は、意味のないような、この「ぬたくり」がとっても大事。「ぬたくり」を充分に楽しむことが重要なんです。
ちなみに、大人はぬたくりをしようとおもっても、つい意味のある形にしがち。ぬたくりを楽しめるって、小さい子どもの才能だと思います。
えのぐの感触、色の広がっていく様、なんかをたのしんでいるのかな?
ほめる
さて、えのぐを楽しんでいる子のそばにいると、何か声をかけたくなりますね。
ここで、大人がしがちなのが、「ほめる」です。ほめるって、実は難しいんですよ。
よくありがちな言葉が、
- 「上手!」「よくできたね」
- 「よくぬったね!」「たのしいね」
・・いろんなほめる、があると思うのですが、①と②はちょっと中身が違うんです。
① は、ほめているんですが、「中身が他と比べていること」が多いんです。②は、その子がやったことを言葉にしていたり、様子を実況中継しているのですが、ここには「共感」はあっても、他と比べての優劣がないんです。
これは、こわいですね。人と比べて常に優位でいるなんてあり得ないのに、そうでなくちゃならない・・。心配で不安になってしまいます。
「その子のやったことをそのまま認める」というほめること。今からでも遅くない!!今日から子どもの声かけに、ちょっと注意を向けてみて下さい。
その子のやったことをすごい!とほめるときに、結果①の言葉を使うことは、あります。「私はこう感じたよ」という感想として使うのはありだと思います。
我が子もほめる
たいてい、我が子と、他人様(ひとさま)の子がいると、大人の社交として、他人様の子のやることを「すごいねー」とほめますね。でもね、まずは我が子でいいんです。
他の子をほめて、うっかり我が子に声をかけないでいると、(やりがちじゃないですか??)我が子にとっては「あの子はほめられた。自分はほめられない」という状況です。
これは、我が子には、自信がなくなって不安定になってしまう状況です。我が子が、安定したおだやかな状態でいられるためにも、しっかり「あなたのことも見てるよ、すごいね!」という事と伝えてくださいね。
絵は、字や数字とは違う
「ぬたくり」の所で、意味のないようなぬたくりが大事、と伝えました。もう一つ。字や数字、は絵や形とは違うことを覚えておいてください。
年少、年中・・となっていった時に、形にする事に自信がない子が、文字や数字を書いて終わらせる、という姿が出ることがあります。これは、とっても苦しいんです。
何もない白い紙にむかって、絵を描く。たのし~い!と描きだす子⇔何を描くかわからなくなったり、描けるか自信がなくて描きだせない、という時「字ならほめられる」と、字を書いて済ませてしまう…
「なんでもいいんだよ」が体の底にあるといいですね。
ぬたくりを楽しみ、形や色をたのしむ前に、字や意味のあるものを教え込まない、という事です。(字の方が絵より興味のある子も、中にはいますが、でも、絵も描けるうえで、ですね。)まずは、のびのびたのしむことです。
【アメリカ選挙のスローガン】
「他の人とくらべて、優位であることが良いことだ!!」というほめ方は、子どもを不安定にさせる、という時に、二つの言葉が思い浮かびました。
一つは「MAGA」ドナルド・トランプさんの「Make America Great Again アメリカを再び偉大に!」。これって「他の国より優れていなければいけない」上に「今の状態はダメだ!」と言ってるって、ことですよね・・。経済はわかりませんが、子育ては、これで教え込んだら荒れ荒れな子ができますね。
もう一つは「Yes,We Can」バラク・オバマさんのこれ。こっちは「私たちは、できる!」ということで、これは、できるかどうかが大事、「できる力を持っている」「やればできる」。できた結果の優劣じゃないんですね。さらに「We」みんなで。子育ては、まずはこっちですね。
園長先生のつぶやき
えのぐ、という場面でのコメントですが、小さい子が絵を描くとき全般で言えることだと思います。クレヨンで描いていても、ペンで描いていても、子どもはまずはぬたくりから楽しんで行きます。
そして、なぜか大人はほぼ何かの形にします。大人には、いつからかクレヨンや絵の具を使うならば『何かの形にならないといけない』という思い込みが浸み込んでいるのかな、と思うくらい、必ず他の人から見てわかるものを描きだします。
正解がないといけない、良い評価がないといけない、という固定概念ができてしまうんでしょうね。それがまだない子どもが、純粋にえのぐの感触や色が広がって行く様を楽しんで行くのを見ると、平和でいいですよね。
そして、その先に「描いて楽しい」「描いていいんだ」が待っているんだと思います。画面に向かって何もなく描きだす、大人はなかなか真似できないこの世界を楽しめるといいですね。
「優れていること=いいこと」
「優れていない=悪いこと、認めてもらえないこと」
という風に子どもに刷り込まれてしまうのです。